モチーフで巡る名画

アルフォンス・ミュシャ『四つの時(The Times of the Day)』朝・昼・夕・夜が紡ぐ光と女性のドラマ

こんにちは、『ひそやかな美術館』の管理人です。

アルフォンス・ミュシャ作品の回。

本日お届けするのは、1899年に制作された代表的連作『四つの時(The Times of the Day)』です。

太陽の動きとともに刻一刻と変化する1日の時間の移ろい。

そこには、「朝の目覚め」「昼のやすらぎ」「夕べの夢想」「夜の休息」という4つの瞬間を、女性たちの表情やポーズ、さらに色彩の移り変わりによって、生き生きと描かれた傑作です。

ゴシック建築風のアーチ枠の中に、女性たちの情感豊かな姿が並んでいます。画面の左から順に眺めていきましょう。


作品の基本情報

  • 作品名: 四つの時(The Times of the Day)
  • 構成: 『朝(朝の目覚め)』『昼(昼のやすらぎ)』『夕(夕べの夢想)』『夜(夜の休息)』の4枚連作
    ※原題(フランス語)はシンプルに『朝』『昼』『夕』『夜』ですが、描かれた女性たちの様子から『〜の目覚め』『〜のやすらぎ』   といった通称でも広く親しまれています。
  • 制作年: 1899年
  • 技法: カラーリトグラフ(多色刷り石版画)
  • サイズ: 各 100 × 37 cm(アーチ状のゴシック風フレーム)
  • 所蔵: ミュシャ財団、堺市ミュシャ館等
  • パブリックドメイン

4つの「時間」が魅せる光と色彩のストーリー

連作の4枚は、朝から夜へと移ろう「光のグラデーション」が見事に計算されています。

1. 『朝の目覚め(Morning Awakening)』

フレッシュなピンクとやわらかな光に包まれ、まるで朝に目覚めたような姿勢をしています。

夜の眠りから覚めた身体が、ゆっくりと開かれていく「生命の目覚め」を表しています。

2. 『昼のやすらぎ(Bright Day)』

両手を頭の後ろに回し、ひじを広げて木陰に立つポーズです。

太陽が一番高く昇る正午、日差しがあふれる昼のひとときを描いています。

周囲には太陽の黄金色を映し出すアイリス(アヤメ)などの花々描かれています。

3. 『夕べの静かな思索(Evening Contemplation)』

太陽が沈みかけ、周囲が柔らかな薄明かりに包まれる夕暮れ時。

女性は手をあごに添え、身体をすこし丸めるようにして遠くを見つめています。

日中の活動を終えて、意識がゆっくりと内面へと向かっていく瞬間を表すポーズです。

4. 『夜の休息(Night's Rest)』

腕枕をし、自分を深い眠りへと委ねる「完全な休息」の姿です。

背景にはほのかな月明かりが差し、西洋美術で古くから「眠りや夢」の象徴とされるポピーの花が咲き、静かな夜の訪れを告げています。


額縁デザイン(Qスタイル)と自然のモザイク模様

『四つの時』を鑑賞する際、女性たちを取り囲むアーチ状の枠にも注目です。

別作品でも記述しましたが、ミュシャは画面上部に円形のアーチを配置し、そこにビザンティン美術風の繊細なモザイク模様や植物の装飾を添えて描き込みました(Qスタイル)。

ただの飾り枠ではなく、朝は野バラ、昼は太陽に映える花々、夜はポピーといったように、それぞれの時間帯を象徴する植物をあしらった枠のデザインと一体化しています。

絵の中の女性だけでなく、装飾枠全体で「時の空気感」を漂わせるアール・ヌーヴォーの美が詰まった傑作です。


おわりに

【時の流れに寄り添う美】

『四つの時』は、私たちが何気なく過ごしている「朝・昼・夕・夜」という時間の流れが、どれほど美しく、愛おしいものかを感じさせてくれます。

忙しい現代を生きる私たちも、朝の陽ざしで目を覚まし、昼の光を浴び、夕暮れに心をゆるめ、夜には体を休める。

そんな自然のリズムに心を寄せてみてはいかがでしょうか。


今日もここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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