モチーフで巡る名画

ウィリアム・アドルフ・ブグロー『天使の女王』の天使は何人?隠された構図の謎

こんにちは、『ひそやかな美術館』の管理人です。

今回ご紹介するのは、彼のキャリアの集大成とも言われる大作、『天使の女王』です。

青空を背景に玉座に座る聖母マリアと、幼いイエス・キリスト。

そして彼らを取り囲むように、画面を埋め尽くすほどの美しい天使たちが描かれています。

やはり彼の絵の美しさと迫力に、一瞬で目を奪われてしまいます。

実は絵のなかに散りばめられた「ある数字」と「完璧すぎる構図」を知ると、さらにその凄さがわかると思います。

今回はこの絵に隠された、美の秘密を紐解いていきます。

ウィリアム・アドルフ・ブグロー『天使の女王』1900年(パブリック・ドメイン)


画面を埋め尽くす天使たち

なんと「21人」!

この絵、何と言っても天使が多い!ですね。

画面に描かれている天使を数えてみると、その数なんと「21人」にものぼります。

聖母マリアの足元にひざまずき、香炉を振って祈りを捧げる天使や、上空を舞い、雲の隙間からこちらを見つめる天使たちまで。

これほど多くの人物が1枚のキャンバスに描かれているのに、私的には、不思議と「ごちゃごちゃしている」という印象はありません。

ブグローはなぜこれほどたさんの天使を、美しく整然と描くことができたのでしょうか。

ブグローが仕掛けた「隠された構図の謎」

その秘密はブグローが計算し尽くした「V字(あるいは逆三角形)の構図」「視線の誘導」にあります。

これほど多くの天使を描きながら、画面が美しくまとまっているのには主に3つの理由があります。

1. 聖母子を目立たせる「視線のピラミッド」

たくさんの天使たちが描かれていますが、私の視線は自然と中央にいる「聖母マリアとイエス」へと吸い寄せられます。

これは周りの天使たちの身体の向きや、傾けた顔の角度、そして彼らの「視線」がすべて中央の聖母子へ向かうように、緻密に設計されているからです。

21人もの天使たちが、いわば「スポットライトで照らす」の役割を果たしているんですね。

2. 天使たちの翼が作る上昇気流

天使たちの背中にある翼に注目してみてください。

左右に広がる翼がまるで額縁のように中央の聖母子を包み込み、そのまま天へと昇っていくような、美しい上昇ラインを作り出しています。

このラインがあるおかげで、画面全体に奥行きと立体感が生まれています。

3. お気に入りの「一人の少女」が生んだ奇跡

以前の記事で『天使の歌』の3人の天使は同じモデルだったとご紹介しましたが、

なんとこの『天使の女王』に登場する21人の天使たちも、基本的にはお気に入りの「一人の少女」をモデルにして描き分けられていると言われています。

同じ面影を持つ天使たちが異なるポーズ、異なる角度で画面を埋め尽くす。

この統一感こそ、21人という大合唱の中にひとつの完璧な調和を生み出している最大の理由なのでしょう。


おわりに

【圧倒的な美身を委ねて】

1900年、ブグローが75歳のときに完成させたこの『天使の女王』。

彼の卓越したデッサン力と、長年培ってきた構図のテクニックがこれでもかと詰め込まれた、まさに一生に一度は生で見たい奇跡のような作品です。

この絵画を目にするときは、ぜひ少し画面から離れて、21人の天使たちが作り出す「美しい構図」を体感してみてください。


付録                                                  

天使たちと、美しい聖母子。

実は、私自身はまだ本物を見たことはないのです。

そんな私でさえ、デジタル画面越しにもこれほど圧倒されるのだから、いつか本物のキャンバスの前に立ち、その生の迫力を感じてみたいと思います!

【奇跡の群像美に出会える場所】パリ「オルセー美術館」

『天使の女王』が所蔵されているのは、芸術の都フランス・パリにある「オルセー美術館」です。

ルーヴル美術館と並び、パリを訪れたら絶対に外せない人気の美術館です。

オルセー美術館は、かっての美しい鉄道の駅舎をそのまま再利用して作られた、開放感あふれる空間が特徴です。

一般的にはモネ、ルノワール、ゴッホなどの「印象派の殿堂」として知られており、彼ら印象派の画家の名画がずらりと並んでいるようです。

そして、フランス美術界のトップに君臨していた「アカデミズム絵画」の傑作も多数所蔵されており、今なお私たちを魅了し続けるブグローの『天使の女王』もその代表格として展示されています。


今回もここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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